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日本茶インストラクター Nishikien owner's weblog 


日本茶インストラクターの店主によるお茶や茶器などにまつわる事柄。

静岡の山間地生産茶、最盛期へ。良茶を生み出すために出来ること。

摘採から製造まで。ちょっと長めの記事になりました。お時間のある時にお読みください。


八十八夜を過ぎ、いよいよ山間地生産茶が最盛期に突入です。摘採直前の美しい姿をご覧ください。良茶生産の基本は「園地で均一に揃った生葉を育てる。」「摘採した生葉(原葉)を出来る限り壊さずに~お茶~にする。」ことです。これはハンドメイドである「手揉み茶をその源流とする日本の蒸し製緑茶」を手本として考えられた「茶工場でつくられる機械製のお茶」であってもなんら変わることはありません。故に、美しい園地の様子はそのままに「良茶」の生産を期待させてくれるのです。

「茶」は本来、山の農作物であり作業効率は決して良くない傾斜地に栽培されます。山歩き用の靴に履き替えて園地へ。靴紐を締めなおしたら出発です。

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山道を歩いて、園地へ。茶園へ到る道で、ニホンカモシカをよく見かけるようになりました。サルやタヌキなども時折目にします。

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山峡と薮北が栽培されている山間地の園地です。急峻な地形、茶畑で見かける背の高い扇風機(防霜ファン)はありません。以前に「ファンは保険みたいなもので一年の丹精が霜で台無しになってしまうのを防ぐけれど、理想を言えばファン無しで栽培したい。費用ではなく、やわらかな新芽に風があたり続ければいい事はないからね。」と伝えられたことがあります。摘みとり前の新芽を見ていると確かにそうだろうなと思わされます。園地で100点の生葉をつくり、いかに損なうことなく「茶」としていく。ひと芽、一枚の葉に含まれる成分は有限で、それを増やすような魔法はありはしません。

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摘採直前の山峡。芽が寝てくるくらいが丁度いいタイミングなのだそうです。品種として「やぶきた」よりも繊維が強く、旨味があるのが「山峡(やまかい)」。製造はやぶきたに比べて難しい品種です。(と、いうよりも実は「やぶきた」がつくりやすい特別な品種。)

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ひと芽、ひと芽が大切に、リズミカルに摘まれてゆきます。ただ手で摘むからいいのではなく、「手摘みでなければ出来ないこと」をするから値打ちがあるのです。精度の低い手摘みは機械の摘採に劣ります。

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この原葉のもつ意味。一芯二葉+αこれは手摘みでなければ出来ない仕事。最終的な製品の姿までを考えての手摘みです。

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摘採された生葉は茶工場へ運ばれます。鮮度のよいうちに製造に入る。生葉に対してピンポイントの殺青(蒸熱工程)。
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手揉み製法を機械に置き換えていくと、お茶には「普通蒸し」も「深蒸し」もありません。100度の水蒸気によって必要十分な殺青が出来れば「蒸せた」ことになり、「深蒸し」というものは本来、存在しない。(「深蒸し」は蒸すのではなく「煮る。」状態になっている。)長時間、湯にさらされることで、茶葉は物理的に壊れやすい(崩れやすい)状態になります。また、次の葉打ち工程(以前はそのまま粗揉。)に移る前に茶葉を冷却することが重要なのですが、湯に浸された葉は冷めにくくなってしまっています。これは蒸れ香を生む原因ともなり、優れた香気を生むのにはマイナス要因です。

蒸熱(殺青)→冷却→葉打ち機→粗揉機→揉捻機→中揉機→精揉機→乾燥機へ 乾燥機からお茶が出るまでは約6時間の工程です。手揉みの製法を機械化した製茶機械は、既に完成されたとも言われています。(ラインにするために仕方ないとはいえ揉捻機がちょっと残念。)すべての機械において、お茶を破砕するようにはつくられていません。冒頭で述べた再現性のある茶が良茶の基本であり、茶葉一枚ずつ、それによって構成される一塊の茶葉群の全体的な硬さを揃え、壊さないよう「茶」をつくることを目的にしています。染み出してくる水分と、乾いていく水分をバランスさせ乾燥状態をつくっていく「恒率乾燥」を行えるようにするための機械です。

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ちなみに上の画像は可搬型摘採機による機械摘採のお茶です。手摘みではありません。(品種:やぶきた)

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お茶が乾燥機を出て、ひと休みしたら拝見道具を借りて、お茶を拝見させて頂きます。茶葉が熱湯と出会うと時計の針が逆しまに動き出します。どこで、どんな事が起きて、なぜこうなるのか。拝見茶碗の中からお茶が語りかけてきます。

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力強く澄んだ水色、(浸出液の色を「水色(すいしょく)」と呼びます。)再現性のある茶葉、こもらずに通る香気、甘渋苦のバランス。そう、これこそが「茶」です。


良茶を生み出すために出来る事はすべてやる。手は抜かない。それを当たり前のこととして。
お茶というものは茶畑で生葉を刈ってきて、機械に入れれば出来上がるものではありません。効率化という言葉や売りやすさなど、鮮度感や色ばかりを重視しする楽な方向へ流れるお茶づくり。人の都合でここ30年の間にお茶は大きくその姿を変えて来ています。「工芸作物としての茶」から「工業製品のような茶」へ。「嗜好品としてのポテンシャルを持った茶」から「清涼飲料のひとつに過ぎない茶(ペットボトルではなく、リーフであってもです。)」へ。

この流れに一石を投ぜずにはいられません。その石が生む波紋がどんなに小さなものであっても。
ただ美味しいだけではないお茶。お茶についての本質の部分を大切な人に知って欲しいとの想いがつのります。どれだけのことを私は伝えられるのか。その事が未来に繋がっていくことを祈ります。

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寒さ除けのこもれびがまるで羽ばたく鳥のようです。

ちょっと遅れて来た山のお茶の最盛期。今年も良茶がご用意出来そうです。首を伸ばして、今しばらくお待ちくださいませ。


日本茶専門店 錦園 石部商店
錦園店主 石部健太朗
日本茶インストラクター(02-0362)

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