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日本茶インストラクター Nishikien owner's weblog 


日本茶インストラクターの店主によるお茶や茶器などにまつわる事柄。

ワインとお茶の共通点。たとえばテロワール(Terroir)。

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最近刊行された書籍に「ワイン」と「お茶」の共通項が書かれるようになりました。近々を振りかえると「知識ゼロからの日本茶入門」「ブルータス6月15日号 おいしいお茶の教科書」「日本茶ソムリエ和多田喜の今日からお茶をおいしく楽しむ本」「料理通信9月号」などです。実にいい傾向です。

さて、「テロワール(Terroir)」。ワインなどでよく目にする言葉です。同じ品種であってもその栽培環境が製品の内質に大きな影響を及ぼすことからそれぞれの土地や環境についてをテロワール(Terroir)と呼称しています。興味深いのはただ栽培適地とするのではなく、それぞれのテロワールを製品の内質と結びつけて表現をしていることでしょう。 (私は「土地特長」と表現をしていますが同義です。)

これは本来、お茶にもぴったりと当てはまります。土地、土質、気候、品種などが内質にあたえる影響はかなりなものです。(テロワールから外れますが嗜好品であり工芸作物であるゆえに生産者の技術も重要。これもワインとの大きな共通項です。)

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安倍川を含む地質図。(内外地図(株)1:50000地質図 昭和61年から平成元年に調査と記載されています。)

マクロな視点では、静岡は安倍川を境に西と東で大きく土地が変わります。地質図などで土地の断面を見ると安倍川以西は急に地層が縦になっています。これは大きな地殻変動によるもので、結果として安倍川以西の本山は5000万年前、天竜に到っては一億年前の土地が露出しています。比較して安倍川以東は地層に大きな乱れはなく、この観点からみれば同じ静岡市であっても全く別の土地です。

2001年頃、生産者と地質図を見ながら園地の話しをしているとこの地図にある石灰岩の多い土地は確か茶原(茶畑のこと)の色がいいんだとも言っていました。これは同一生産者の、同じ園で比較をしているので変動の要素として土質の可能性が含まれます。(※土質だけでなく、土地の表面近くの水はけの偏り、気流なども要素のひとつになります。)

これを踏まえて園地視察をすると本山茶産地(安倍川上流域)の、安倍川支流藁科川流域へ入ると茶園の色が青くなるのがわかります。土地柄として在来が残っていたり品種導入が盛んだった頃があるとはいえ、栽培されているのはほとんど「やぶきた」なのでこれは品種によるものではありません。また、生産者ごとの差異を飲み込んでしまうほどの広さで違いがあるので、生産者による管理の差とは考えにくい。気流や水はけなどといった要素も同様です。


翻って考えれば、永年性の農作物で生涯を通じて露天で栽培され、根を地下1メートル以上も伸ばし、からだを形づくる一部である「葉」を使用した「茶」にそれぞれのテロワールが現れないと考える方が無理があります。それぞれの土地の特長を持つのが本来の「茶」の姿と考えるべきでしょう。

茶に関してこれまで「テロワール」が語られなかったのには原因がいくつかあります。そのひとつはブレンドです。たとえば本山などの山間地生産茶と牧之原台地のお茶はその製法、香味などまったく別のものです。これらをブレンドしても一般の方がそのテロワールについてを楽しむことなど出来ないでしょう。そして、植物のもつ青々しさや鮮度感を優先しすぎる製法も原因のひとつ。青汁のようなとか、いぐさを口にしたようなとの感想をいだくような製品に土地の特長は現れません。(「茶」になり切らず「植物」のままの要素が強すぎる。)茶工場の巨大化、大型機械の導入による大量生産もそう。

お茶生産の歴史はそれぞれの個性が生きるつくり方から、より正体が見えなくなる方向にシフトしてきました。良い生葉を育て、製茶の基本である恒率乾燥をし、再現性のある製品をつくる事から大きくズレてきています。製品の形状を細かくするカッターがついている製茶機械、粉のような製品を是とする荒茶つくり、ただ甘酸っぱいような火香を良しとした火入れ。そして粉末茶。(※茶の機能性や保険成分を利用する観点からはわかります。でも、それは「茶」を原料にした工業製品であり、本来の「茶」の姿ではない。)なぜ、そうなるのか?答えは簡単です。作り手側から見て楽だからです。

高度成長期を過ぎ、つくれば売れる時代は終わりました。様々な飲料が生まれ、個性を失った茶はただの飲料のひとつになり「お茶でなければ」と思えるような製品が減っていきました。近年お茶が売れないというニュースをよく耳にします。理由は簡単です。急須が無いとかいうような理由ではなくお茶に魅力が無くなったからです。「お茶でなければ」と思えるようなお茶を売ってこなかったからです。作り手や売り手がわかりやすさや、売りやすさばかりを考えて真面目にお茶と向き合わなければ売れなくなるのは当然。

茶業界では嘆きの声が聞こえる昨今ですが、私はいい時代にお茶屋になれたなと思っています。いよいよ面白くなってきました。多くの方のお力添えで私の手元に揃う「茶」はとても個性があり、そのひとつひとつがちゃんと説明が出来ます。その香味はそれぞれに代用品はない「このお茶でなければ」と思えるものばかり。

メディアが語るワインとお茶の共通項。これは確実に存在します。今こそ、生産者、製茶問屋、専門店がお茶にちゃんと向きあい直す時です。都合の良い事ばかりを考えず、楽をせず省かず、当たり前のことをただ当たり前に。大変でしょう。でもそれも含めて「茶」です。


日本茶専門店 錦園石部商店
錦園店主 石部健太朗
日本茶インストラクター(02-0362)


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コメント

今年のストックを求め…

お久しぶりです。お元気ですか?

名古屋のイベント、立寄れそうなのでお伺いしようと思います。
スぺースも従来より広いそうで楽しみです(^^
少々あやしげなる出で立ちで現れるかと思いますが
その際はどうぞよろしくお願いします。

相変わらずお忙しいようですが、
体調を崩されぬようお気をつけください。

お久しぶりです。

まゆげいぬさん

おひさしぶりです。返信が遅くなってしまい申し訳ありません。ご想像の通り、忙しさにかまけてしまっておりました。名古屋催事においでくださるとのこと、ありがとうございます。
磯部さん、青峰さんの新作も登場します。今回の催事はOZONEとは異なり「お茶が飲める。」内容です。
お楽しみ頂ければ幸いです。

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