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日本茶インストラクター Nishikien owner's weblog 


日本茶インストラクターの店主によるお茶や茶器などにまつわる事柄。

「蒸し製緑茶」の誕生

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日本茶インストラクターのテキストや世の中に出回る日本茶の本において、緑茶は大きく「蒸し製」「釜炒り製」とだけ分けられていますが、これが間違いの始まりです。

「蒸し製」は

①水蒸気を熱源に使用した製法
②水蒸気の持つ凝縮潜熱を利用する製法

に分けられ、①は現象として「湯」を使う湯びく茶に近い作り方です。蒸熱工程に使用される送帯式は「湯びく茶」そのものであり、マニュアル通りに使われる丸胴式蒸機は蒸し製と湯びく茶のハイブリッドとなっています。一般的に言われる60秒蒸すなどは「茹でる」工程をいい、浅蒸し、中蒸し、深蒸しには現象としてなりません。


②は言葉通りに水蒸気の凝縮潜熱を「酵素失活」と「茶葉に対しての均一な熱衝撃」に利用するもので「湯びく」の状態を排除した製法です。添付写真のように胴部分のカバーを外して蒸熱を行う製法です。横沢共同や他、一部の製茶工場ではこのような製法で蒸熱を行っています。拝見したことはありませんが、おそらく同様の方法で「碾茶」の蒸熱を行っている工場があると想像されます。

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「釜炒り製」は

③熱源としての加熱した鉄などから茶葉への直接の伝熱によって酵素失活(殺青)を行う製法。少量の茶葉を使う釜炒りなど。

④熱した鉄などから茶葉全体を熱し、茶葉内の水分を加熱、「炒り蒸し」の状態を作る製法。台湾他に見られる殺青機など。

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販売時に語られ、伝えられている言葉に間違いがあります。その事に気がつけるかどうか。生産者、製茶問屋などの茶業者でさえ気がつけていないのが現実です。

最も基本的な部分を理解すること。

百年の時を重ね到達した②の蒸し製緑茶を目にする事が出来ていること。

つまり「蒸し製」は過去において安定して作れなかった茶種であり20世紀後半から21世紀前半に初めて製品としての製造が可能となった茶なのです。

2016年 夏のご挨拶

お客様へ

 お世話になっております。錦園の石部です。夏のご挨拶が出来るのも皆様のおかげです。ありがとうございます。今年の新茶は生産者ごとの品質に差が大きく難しい年でしたが、関係者と連携しながらどうにか良品のご手配が出来ました。

 「Youは何しに日本へ」に出演なさった日本茶がとても好きなスウェーデン人のブレケル・オスカルさんが番組内で「望月庄司作 さくらかおり」をご紹介くださり、多くの皆様からお問い合わせを頂戴しました。さくらかおりの特長的な風味は水出しだと感じやすくなります。これまで春のお茶のイメージが強いさくらかおりですが、水出しもお試しのほどを。

 催事などで好評なのが昨年テレビでも話題になった「蒼風(そうふう)」です。「世界で一番受けたい授業」の中でケルセチンを多く含む機能性品種茶として紹介がありました。「蒼風」は日本茶らしい旨みと華やかな香気が特長の品種茶で、4年ほど前から摘採製造が可能になり、扱い茶のひとつになっています。

ケルセチンは・認知機能障害の予防・活性酸素の除去 
・血管機能の改善・脂質代謝の改善

などの効果が期待されているフラボノイドのひとつです。玉ねぎの表皮部分にも豊富なのでご存知の方もいらっしゃるかも知れないですね。保険成分はともかくとして、個性があって次世代の静岡茶を感じさせてくれる品種茶なので是非、一度ご賞味いただければと思います。

錦園 石部健太朗

2016年夏季ご挨拶


二十一世紀の今、日本茶の扉

二十一世紀の今、日本茶の扉

現在、2016年7月です。日常茶飯の言葉があるように私たちの暮らしの中で茶は普段から馴染みのある飲料です。

人の感覚は自分が生きているタイムスケールに影響されます。子供の頃から自然に身の回りにあれば昔からあったように思いがちになるものです。

私たちのよく知る「日本茶」は実は歴史が深くはありません。明治以降、外貨獲得を目的に国策として生産された「茶」が原型です。1738年に永谷宗圓が発案したとされる蒸し製緑茶の製法を基礎としながら機械化された茶です。

茶の輸出と言ってもピンと来ない方がほとんどでしょう。累計統計を見てみると明治24年(1891年)全国の荒茶生産量の9割は輸出されています。当時の輸出先はほとんどがアメリカでした。

静岡市で暮らす人には馴染みのある静岡鉄道は明治39年(1906年)に静岡市から清水港へ茶の輸送をする為に作られた鉄道です。産業の規模を思わせる事例のひとつです。

大正6年(1918年)の30102t(内、緑茶17874t)をピークに輸出は減じて行きました。大正6年の総生産量に対しての国内用は22%であった のに大正8年には国内用が64%に逆転します。以降、輸出量が国内用を上回ることは無く、昭和38年には総生産量の95%以上が国内向けとなり、昭和43 年には1064tの緑茶が輸入されるようになりました。

平成16年には総生産量の99%が国内向けとなり茶の輸入量は16,995t。

今年は平成28年、平成元年生まれの人も28歳です。茶が国策として輸出されていた事など想像もつかない人がほとんどでしょう。

明治16年の茶生産量は20800t平成25年の生産量は82800tとなりました。この間に民間育種も含めれば100近い品種茶が生まれ、手揉みの製茶理論を機械化した優秀な製茶機械も開発されました。
茶の品種が登録されるまでに掛かる年数は20年近く、一朝一夕に新しい品種は出来ません。

21世紀の今は先達の努力、茶の大量生産と消費に支えられた時代があったからこそ出来た「近現代の日本茶」を楽しめる時代です。
高品質でかつては貴人しか楽しめなかった品質の茶を誰もが手にする事が出来るようになっています。
多種多様な品種群は実に表情豊かで、無香料なのに花のような香りや桜葉のような香りが楽しめる品種もあります。

そう、まるでワインのように茶を楽しめる時代。いや、ワイン以上に楽しめる嗜好飲料となり得るのが現在の日本茶です。
これまでの歴史を振り返っても、今のような時代はありませんでした。これまでの歴史を下地としながら新しい茶の楽しみ方、茶文化を生み出せるのが今なのです。

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