日本茶インストラクター Nishikien owner's weblog 


日本茶インストラクターの店主によるお茶や茶器などにまつわる事柄。

誰でもお茶を美味しく。

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数年前の初夏、地下鉄のフリーペーパーで記載された「誰でもお茶を美味しく飲める方法」から始まり、常滑焼平型急須へ。アイデアの理由を考えながら、頼まれたわけでも無いのに「こんな形ではどうでしょうか?」「こうしたらもっと。」の繰り返しです。

轆轤製作の急須の形などは上に伸びるか下に縮むか、丸くなるか、筒になるかのバリエーション。古い急須にも平型はありました。ただのバリエーションではなく、形状から生まれる香味の訳を考えていく。いくつもある中の「変わった形の急須」ではなく、「理由のある急須」へ。

作り手や訳知り顔の方から陰日向より「この形は前から有ったよ。」のお声も頂戴します。もちろん、存じております。
次はどうするのか?本気で販売し伝えていくのに大事なのは「数」なのです。

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値段分の価値からすれば決して高くはありませんが、三桁の急須が溢れている世の中です。そこへ12000円から35000円を越える価格の急須を提案していくのは、ほんの少しですがガッツがいる仕事なのかも知れません。
催事などでずらりと並ぶ平型急須ですがご好評を頂戴し、製造が間に合わない状況が続いています。

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最高に美味しい一杯のお茶をいれる人から
「そう、こういうのが欲しかったんです。ありがとうございます。」

最高峰のお茶をつくる人から
「おらのお茶をいれる為に作ってくれたような急須だなあ。ありがとう。」

急須を手に笑顔でレジに並ぶお客さまから
「急須を買うつもりは無かったけど、とてもいい品に出会えました。ありがとう。」

百貨店のご担当者から
「今のお客さま、お買いあげになられて、ありがとうっておっしゃっていましたよね。いいなあ。嬉しいですねえ。」

私は何ひとつ物はつくれませんが、作り手とお使いになられる方達の傍らで、全ては繋がっているのだなあと眺めている日々です。

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ありがとうございます。
皆さま今後とも何卒よしなに。

お茶とワインの共通性

私がイベントなどでワイン風に冷茶を出すようになったのは2002年の「水香清茶(水見色かおり)」の試飲時からでした。

印雑の持つ香味が冷茶とのマッチングが良くてそれを連続試飲出来るようにするにはどうしたらいいかと考えたからです。そして、高価格のお茶であるが故に「ワイン」の持つ雰囲気を利用しようとも思いました。そして、「お茶の価格」ではなく、比べる価格を「ワインの価格」としようとしたのです。


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リンク先は2003年の大妻女子大で開催された明日の銘茶見本市での様子。
http://www.nishikien.com/2003/…/150903/nishikien1507068.html


生産者(ワイナリー)、品種(セパージュ)、土地特徴・ミクロクリマ(テロワール)、年ごとの気象及び製茶による製品キャラクターの違い(ビンテージ)など、農産物である茶とワインには共通項を書けるので、お茶とワインは似ていると表現し易くなります。
お茶とワインが似てるというよりも、保存性が高い、生産量が限られている加工農産物であれば自ずから似るのです。


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RTD(Ready To Drink :開栓して直ぐに飲める飲料)とした場合、お茶はワインの替わりにはなれません。どんな高価格帯の原料茶を使用しても「お茶はいれた時が最も美味しく、急激に劣化していく飲料」です。固形物から浸出を行い、水で薄まったものとブドウそのものが加水されずにそのままあるワインは違う性質を持ちます。

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先日、フレンチレストランのシェフにご協力をいただけて開催されたワイン会に登場したワインは1本あたり78000円(飲食店流通価格※一般小売ではありません。)の価格。保存状態、品質、楽しさや面白さを十分に兼ね備えていたワインでした。

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私も業界的にみれば高品質、高価格帯かつ、個性のある製品扱っていると自負していますが、その最高価格帯の茶を使ってRTDを作っても前述のワインのような価値はありません。仮に製品化した際に高価格となるのは、極端に小ロットであるが故に製造や外装費、宣伝費など茶以外の部分にコストが掛かるからであって、茶そのものの価値が高い事にはならないのです。


干支のひと回り以上の時間を掛けて確認出来た事は茶とワインは農産物としての類似性はあるけれど、根本的に全く違うモノという極々当たり前の事でした。

お茶は冷温を問わず、手ずからいれるからこそ、その価値が活かされるのです。茶に関わる者はこの大原則を忘れてはいけません。

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茶価を上げるには

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新聞などに煎茶の茶価低迷の文字を見かける事が多い昨今です。過日、某所にて茶価を上げるにはとの話が出ました。

「価格帯を上に設定しても他所から安いお茶が入ってくるだけなのだ。値段で買うならこの程度でしょうがない。その値段にしかならないなら、これしか作れない。」

お茶が美味しくなくなるのも道理で、負のスパイラルです。


茶価を上げるのであれば、出口の値段(販売価格)を上げる他ないでしょう。それが無理なのなら更に効率化を進めて現在の茶価でも利益が出るようにしていく。または海外などの別の売り先を見つける。ただ言葉の壁は決して薄くも低くもなく、面倒事は少なくありません。人件費が世界的に見て最高レベルの日本です。


販売の現場でこれまで一番売りやすいのは「値段」でした。お茶では詰め放題のイベントなどはその最たるものです。年数回のお祭りならそれもいいかも知れませんが定期的に、入れ替わり立ち替わりそんなことをしていればそれ目当てだけの売り場になっていきます。

商売でみれば客単価を落としてリピートの時間を長くするだけで魅力はどんどん失われていく。同じ品種、同じような製法、同じような味、別に差し替えが効くただの「茶」です。素人がなんとなく美味しい、「この値段ならこれでいいか。」と思えるようなお茶を作るのは難しいことではありません。

茶価が落ちないこと、販売価格が他に影響されないこと。それは「ならではの品」、「差し替えが効かない製品」をつくるしかないが私の結論です。品種、園地ロケーション、製造など。

ボヤボヤせずどんどん前へ進んでいく気持ちがなければ手遅れになります。何せ一番茶は年に一回しかなく、30年のベテランといったところで同じ園地の一番茶をお茶にしたことは30回しかない。機械が大きくなれば尚更です。


輸出や好景気に支えられた一大産業のような茶の時代は二度と来ないでしょう。その時代のお陰で本来の深くお茶の楽しむ為の下地は出来ました。
斜陽産業などではなく、新しい茶の時代の帳に立っているのが今です。

21世紀、個性的な品種に溢れ、お茶をいれる安全な水にも事欠かない時代です。少し出掛ければ園地も見れる。精度の高い自国産茶器も沢山あります。真面目にお茶のことを伝え、丁寧にお茶をいれればいいだけで茶の未来は明るいはずなのです。

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最良を目指す事が「常」であること。

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縁のある人達が見えない糸に誘われるように、茶の事を伝えている姿をテレビで見ました。行間を読めない輩がしたり顔で好き勝手な事を言うだろうが先ずはよしとしましょう。
商売ではなく、日曜日のゴールデン枠全国放送に出ているのがただただ嬉しい時間でした。恩人に観せてやりたかった。そして、話しをしたかった。 いい話しも悪い話しも笑いながら。

さて、補足を少々

「芽、葉、茎の硬さがが揃う日」は最高品質の茶を作る為の「適期」はそれほどまでにピンポイントという事を意味しています。

テレビ的な分かりやすさ故に伝わりにくい部分がありましたが、つまり、良茶生産は「適期摘採」であり「原葉ありき」なのだという点が先ずは大事なのです。
一芯二葉+三葉のみの摘採はその為に行います。

言葉にするのは簡単ですが、その適期に向けて自然環境に左右されながら一年、いや、数年を掛けて挑んでいくのが「良茶」生産です。そして、それを「特別な事」とせず、「当たり前の事」として向きあう。

中々にテレビでは伝わり難い部分なのですが、それが出来た後に、正しく製茶を行った先に、胸を張って「最高峰の茶」と言葉に出来る茶が生まれます。

そして、相場に左右される事なく、品質に対して値をつける製造と販売が成されているからこそ可能になっています。

作る者も、売る者も、買う者も、最良を目指す事が「常」であること。
それが茶の価値として現れるのです。

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2015年錦園サロンセミナー第2回「標高800mの自然仕立て茶園の今。~2015年の一番茶を振り返りながらの茶園さんぽ+築地東頭2015を園地で楽しむ。~」

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2015年錦園サロンセミナー第2回「標高800mの自然仕立て茶園の今。~2015年の一番茶を振り返りながらの茶園さんぽ+築地東頭2015を園地で楽しむ。~」が無事に終了しました。
フィールドワークを組み込んだセミナーを開催する場合、一番気になるのは兎も角も怪我無く無事に終わることです。

6月6日の前夜は大きな雨音が響く夜でした。深夜に園地でいれるお茶の準備などを雨が上がってくれるといいなと思いながらしていました。
食事用の時に楽しむお茶は「安倍の百年茶2015」メインは「築地東頭2015」。参加者へのお土産は「築地東頭2014&2015」。ヤカンにカセットコンロ、急須に湯呑などなど。結構な荷物になるものです。

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皆様の日ごろの行いか、明け方には雨も上がり霧が漂う幻想的な風景も楽しめる内容となりました。想像どおり、雨のおかげで山ヒルが靴の上を這う事もしばしばでしたけれど。

食事後にさあ、園地の最上部に行きましょうと登っていくと、そこはお茶の香りが漂う空間でした。

数日前に刈り落とされた枝葉が夏のような日射しで乾燥したところに、沢山の雨。気温の上昇とともにお茶をいれた時と似た香りが醸し出されたのです。全くの偶然だったのですが「ここお茶の香りがしますね。」と笑顔が溢れました。

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休憩小屋に戻り、築地東頭2015をいれながらミニセミナー。お茶を口にした途端に、時が止まったような表情の後に再び笑顔になられる方達。

その土地で生まれ作られた茶をその土地で飲む。数週間前までこの園地に生えていた茶葉が急須の中にあり、その場で皆で飲める事。とてもシンプルだけれど贅沢な時間。

茶園見学といえば、緑溢れる新茶シーズンの頃となるのが普通ですが、あえて更新後の園地に足を運ぶ企画。これまでサロンセミナーやインターネット、催事などでこの園地のお茶の事をお伝えしたからこその内容だったのかも知れません。

「胸ほどの高さがあった茶樹が足首の高さまで刈り落とされてますね。」
「聞いてはいましたが、実際に目にすると驚きますね。」
「秋にはざわざわと風に揺れる姿になっている事でしょう。ご縁があればその時に又。」

私は茶園でお客様とお話しをし、お茶をいれる度に「日本はお茶がつくれる国でよかったな。」としみじみ思います。

ありがとうございます。今後とも何卒よしなに。

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錦園 石部健太朗

「至福のお茶時間」名古屋三越栄店 会期:2015/06/10~06/16

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6月開催の名古屋催事のご案内です。お近くにおいでの際はお気軽にお立ち寄りください。
折込広告に父の日プレゼントとしてご紹介いただけることととなりました。

「至福のお茶時間」
常滑焼作家磯部輝之・伊藤成二 二人展と限定生産静岡茶特別試飲販売会

●6月10日(水)~16日(火)
●6階スタイルコート#6

限定生産の希少な静岡茶と常滑焼急須
作家2名の茶器などをご紹介。期間中は、日本茶ソムリエ 石部健太朗氏によるデモンストレーションを随時開催いたします。(新聞折り込みより抜粋)

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標高800mの自然仕立て茶園 築地東頭

静岡市の奥山、標高800mの自然仕立て茶園。お茶摘みさんの話し声と、茶を摘む音が「ポツ、ポツ、ポツ」と空間に漂う。日本の原風景のひとつなのだろう。

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およそ10年前、「いつかこの茶園のお茶を広く伝えたいですね。」と友人と話した。彼の尽力、続ける心と力の甲斐があってそれが現実になりそうだ。天候にも恵まれ最高の瞬間。

「特別な事は何もしていない。当たり前なことをしている。ひとつも手を抜かないだけだ。」

園主がかつて茶工場の事務所で笑いながら話した言葉だった。この地の茶と出会い、この茶を介して人が人と会っていく。茶業者として関われる事にただ感謝の気持ちになる。

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日本茶に触れ、この土地の茶に縁が出来た方へ分け隔てなく想う気持ちを文字とするなら。
「幸多かれ。日本茶は本当に面白い。知るほどにあなたの人生を豊かにするでしょう。」

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