駿河区丸子の園地にて

2012年3月11日 駿河区丸子の園地まわりをしてきました。雨をもらった後の気温上昇で、春肥をいれられていた茶園は冬からすっかり春の顔になりました。親葉の色がここ数日でがらりと変わったのがわかります。


山頂に大日如来が奉られている園地。園地に登る坂道では、ツクシがスギナに姿を変えていました。山頂を中心に茶園が構成され、改植後には民間育苗の印雑系品種を導入してくれています。

植えられて30年生以上のやぶきたを抜根し、新たにやぶきた以外の印雑系品種を植えていくこと。業界外の方にはわかり難いことですが、これはとても勇気のある決断なのです。一般の方が新聞記事の聞きかじりで「やぶきた偏重」との言葉を振りかざすこともありますが、携わらない者の言葉として無理はないのですが無責任といっていい。

適期の長さ、作りやすさ、万人が好む香味、茶商が抱えるランニングストックはほぼ「やぶきた」で構成され、それ以外の品種をやぶきた以上の価格で手にいれようとするのは稀なのが現実です。最優良品種とされる「やぶきた」は伊達ではありません。
品種の中でも印雑系は来歴に「アッサム系品種」を持ち、香味の特長がはっきりしている為、好き嫌いの好みが分かれます。これまでほとんどの茶商に嫌われ、高額で取引されることもなく過去に導入されたものも改植でやぶきたに切り替わっていきました。印雑の新規導入はその流れに逆らうこととも言えます。
茶樹は定植をされてから数十年はその地に根をはり、生きていきます。人が世代替わりをしてもその場にいます。人に望まれる限り、ずっと。
抜根された茶樹の前に植えられた幼木を見ると責任を感じます。この幼木が成園になり、年数を重ねていける事の最前線に立つのは私達だからです。

ここに植えられた茶には素晴らしい個性があります。華やかな香りと日本茶らしい旨味はいれ方次第で様々な楽しさを表現出来るポテンシャルを秘め、冷茶にすればまるで白ワインのようで、熱湯を使えば花のような香りが広がります。多くの方がまだこのお茶の美味しさを知らずにいます。
仕事を終えたやぶきたを前にして、生産家が「植えてよかったなあ。」と思ってくれる為に、お客様が「お茶って美味しいんですね。」と思ってくれる為に、自分が出来る事を重ねていかなくてはとの決意を新たにしました。
そして、杉山八重穂の園地へ。

新芽がさらに大きくなってきました。芽の伸びる音が聞こえてきそうです。

写真を撮っていると風の中に菜の花の香り。山を下りる途中、視界に菜の花畑が見えたのでクルマを停めました。近くによると盛りは過ぎていましたが、まだ美しさを残す花の風景。季節の流れを感じながらシャッターを切りました。
日本茶専門店 錦園 石部商店
錦園店主 石部健太朗
日本茶インストラクター(02-0362)
錦園店主 石部健太朗
日本茶インストラクター(02-0362)