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日本茶インストラクター Nishikien owner's weblog 


日本茶インストラクターの店主によるお茶や茶器などにまつわる事柄。

花粉症の季節。釜炒り製法のべにふうきを飲んでいます。

寒さの厳しい一月です。この寒さで花粉の飛散にブレーキが掛かったようにも思いますが、飛散はあるようです。私にも花粉症の症状が出てきたので10日ほど前から飲み始めました。

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さて、べにふうきは花粉症の症状を軽減することが出来るお茶といわれていますが、べにふうきが効くわけではありません。有効とされるのは「メチル化カテキン」という成分。べにふうきは「メチル化カテキン」を多く含み育てやすい品種とされて研究等でその結果を追証されれた品種です。(「べに」の文字は紅茶用の新種を意味します。紅茶用品種は緑茶にした場合、苦渋味が強くなる傾向となります。紅茶にした場合はメチル化カテキンは無くなってしまいます。抗アレルギーを期待するなら緑茶につくられたものでなければなりません。)

平成13年にアレルギーへの有効性について発表があってから10年が過ぎました。早いものです。植えればお金になると思っていた生産家の中には思ったほどではないからもう抜いてしまおうという方も少なくないとか。発表の当初から興味をもち追いかけてきましたが勉強になった事が沢山あります。

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平成13年発表時のレジュメ

べにふうきの製造で難しいのは有効成分が多くなる葉の熟度になると、一般的な蒸し製法では製茶が困難になってしまうこと。蒸し製法は元々が繊維質の少なく水分量が多い生葉を製茶するのに向いたもので、硬くなった生葉を相手にするのは苦手なのです。その事に気づかずに製茶してしまうと酸化酵素の失活がしきれていない「殺青不良のお茶」になってしまいます。結果、「苦渋味が強い。」「変質しやすい。(緑茶なのに紅茶のようになってしまっている。酸化変質によって有効成分のメチル化カテキンが減少します。)もの」が多く出回りました。←これは現在進行形です。(※製品をつくるのに必要以上の効率を追わずに、生葉の質、投入量などをコントロールすれば蒸し製でも可能なはずです。)

硬く繊維質が強くなった生葉でも酸化酵素の失活(殺青)が出来、べにふうきの品種のもつ苦渋みを減らせる製法として有効なのが釜炒り製法でした。私自身が花粉症であり、飲む側の立場から飲み飲みやすいことが重要と考えていたので、釜炒り製のべにふうきの苦渋味の少なさはお客様に薦めるのに背中を押してくれるものでした。約1ヶ月続く花粉症のシーズン(私はスギ、ヒノキなので2ヶ月近くです。)毎日、3回近く苦いものを飲み続けるのは辛すぎます。美味しさに関しては望むべくもないけれど、せめて飲みやすく現状におけるその答えが「釜炒り製のべにふうき(紅ふうき)」です。数年間、催事などを通じて多くの方に飲んで頂きました。全ての方とは言えませんが、多くの方が有効であると体感し、感想を伝えてくださっています。

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寒さが緩めばいよいよ本格的に花粉の飛散する季節になるでしょう。「釜炒り製法の紅ふうき」私の扱うお茶の中でおそらく一番美味しくないお茶なのではとも思います。でも、出回っているべにふうきの中では飲みやすいものになっているはずです。催事においでの際はご試飲も頂けますので是非、一度お試しください。お声を掛けてくださればサンプルも差し上げます。

大きい袋は150杯分(¥4200)、約1ヶ月から1ヶ月半分。小さい袋は30杯分(¥1050)、一週間から10日分。缶入は25杯分(¥1260)です。ちょっとしたギフト用にどうかと考えてつくってみました。説明が巻紙になっています。
インターネット上には登場していませんがティーバックタイプもご用意出来ました。ポットなどでのいれ方を書きましたが、500ccくらいの保温性のある魔法瓶にいれて持ち歩きながら飲むのにいいでしょう。¥1050(2g×20個入)

粉末タイプの飲み方例
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ティーバックタイプの飲み方例
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缶入の巻紙


べにふうきに限らず、モノづくりは「作れば売れる。出来ればよし。」ではありません。儲かりそうだから植えるのではなく、その有効性を知りお客様の役に立つのではと思い栽培、製造をする。効率や利益ばかりを考えずに、出来たものに問題があれば何故なのかを考える。

仕事は自分の為にするのではなく人の為にするものです。その事を忘れてつくられたモノにはちゃんとそれが現れます。お茶を知るほどに感じます。「このお茶、お客様の為にと思って作りましたか?」と。

日本茶専門店 錦園 石部商店
錦園店主 石部健太朗
日本茶インストラクター(02-0362)

深蒸し茶(と呼称されるお茶)は錦園にはございません。

昨日(1月12日)放送のためしてガッテンで深蒸し茶に関しての内容がありましたが、錦園には深蒸し茶はございません。

内容を見ていて気になったのは、普段お茶を飲みなれない方が放送の通りにあのお茶を飲んだ場合、「胃の痛み」「不眠」が心配されることです。十分にお気をつけください。


色を優先した製法でつくられている為、破砕された茶葉の影響で口では苦味を感じにくくても(実際には味としても苦いはずですが。)、胃は別です。また、カフェインの過剰摂取にも繋がりかねないもので、かなりストレスが掛かります。
番組の性質上、健康、身体によいという事を面白く大げさに取り上げる方向ですので致し方ないとは思いますが、あまり踊らされませんように。(ダイエットや善玉細菌の増加について優位性があったとされたのも「カプセルに入った粉末茶でした。)※1/28追記:番組中カプセルに入っていたのは粉末茶ではなく浸出液から作った粉状もの-スプレードライ?-とのことです。浸出液で作ったものなのであれば、普通蒸しも深蒸しも関係ありません。

お茶には健康食品としての一面はある判断出来るような研究の結果を何度も目にします。それであったとしても、過ぎたるは及ばざるがごとし。

日本で生産される世界的にも珍しい蒸気で蒸す製法のお茶。お茶をいれる道具群も伝統と技術を積み重ね研鑽されたものが多くあります。健康は大事ですが、文化としてのお茶の良さを大切にしたいものです。
お茶の一番の効能は「心に効く」でしょう。



日本茶専門店 錦園 石部商店
錦園店主 石部健太朗
日本茶インストラクター(02-0362)

凍てつく朝。山間地茶園にて。

霜とお茶の葉-02

なかなか寒くならなかった昨年末でしたが、年明けから強い寒波の襲来で冬の様相となってきました。白く霜のおりた茶園は冬の山間では見慣れた光景です。「霜」と「茶」と文字がならぶと反射的に心配をしてくれる方もいらっしゃいますが、冬に向ってちゃんと準備の出来た茶樹は-10度の低温にも耐えられます。お茶の樹は一日の平均気温が19度以下になると新芽の成長が止まり、冬眠に向います。お茶は落葉して冬を迎えるのではなく、身体の中の水分を減らしていって冬にそなえます。葉の緑が濃く、硬くなるとツバキの仲間がもつクチクラ層が光を反射し銀色に見えることがあります。銀色に輝く茶園も冬の風景。

霜とお茶の葉-01

さて、園地を回っていると昨年の一番茶以降、手がいれられてない園が目立ちます。昨年の霜害、数年にわたって言われる茶価(荒茶の買取価格)の低迷、作業従事者の高齢化が主な要因でしょう。

茶価の低迷は茶を販売する側にも責任があります。20年以上前から「おススメは1000円のお茶」といわれて物価や製造のコストが上がってもその言葉は変わりませんでした。少し考えればわかることですが、1000円のお茶の原価は20年前のそれと同じであるはずがありません。価格の正体が見えにくい「茶」という商品だから誤魔化しが効いてきた結果、お茶は価格に対して期待されるクオリティを急速に失いつつあります。
現状を変える一歩として、専門店をはじめ、お茶の試飲催事をするのであればその使用するお茶をもっと上価格のものを使用すべきです。2000円/100g以上の品をつかってお茶本来がもつ美味しさを伝える。その努力をしていくことが欠けています。高い価格帯のお茶の良さを伝えずして茶価が上がることなどありはしないでしょう。
日本茶インストラクターも「こんなに安いお茶でもおいしくいれられる」的なことを発信することがありますがそれは豆知識みたいことを伝えるだけであり、さして重要なこととは思えません。専門的な勉強を重ね、知識と技術を習得したした先にあるのは、本当に価値のあるものの姿を責任をもって伝えることです。

そして消費者も、荒茶まがい安価なお茶をお買い得と感じるさもしさも本物をこの世から消すことの手助けをしていると知るべきです。「お茶なんてこの程度でいいから。」この言葉もよく耳にします。その言葉の先に何があるのかを考える事もなく。

つくれば売れる時代が続き、その幻想の中でお茶はその姿を大きく変えてきました。大量生産、効率化の言葉とともに茶葉のミンチを乾燥させただけのようなモノが多く流通しています。あなたの手元にあるお茶、それは本当にお茶ですか?

日本茶専門店 錦園 石部商店
錦園店主 石部健太朗
日本茶インストラクター(02-0362)

臼田(うすだ)律子氏 作品展「人形夢幻」 銀座静月堂1月25日~30日

今回はお茶でも急須でもない話題です。ご縁のあります人形作家臼田律子さんの作品展が銀座にて開催されます。2007年の静岡開催で命をもったような人形を拝見し、人の感性と手仕事の素晴らしさに感動したことを思い出します。

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期間:1月25日(火)~1月30日(日)最終日午後5時終了
場所:銀座清月堂 中央区銀座5―9―15(銀座清月堂1F)
お時間の都合がつきます方は是非、ご覧になられることをお奨めします。


うすだ律子さんHP 人形夢幻 http://人形夢幻.com/

2007年静岡で開催された人形展の様子
臼田律子氏人形展開催-1  
臼田律子氏人形展開催-2


日本茶専門店 錦園 石部商店
錦園店主 石部健太朗
日本茶インストラクター(02-0362)

新春の催事 恵比寿ガーデンプレイス三越恵比寿店(1/3~1/6)

三越恵比寿店にて開催させて頂きました。おいでくださいました皆さまありがとうございました。

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予定していた内容が諸事情により変更などしてご迷惑をお掛けした面もありましたが、お茶の楽しさと急須づくりの職人諸氏の手仕事の素晴らしさをお伝えできた4日間となりました。

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恵比寿ガーデンプレイスでは1月10日まで展示される「バカラのシャンデリア」が煌びやかに眼をを楽しませていました。その美しさの一端でもお伝え出来ればと思います。

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伝統工芸の技の素晴らしさは古今東西、和洋を問わず人の心を揺さぶるものであると感じます。

さて、昨年から続く県外での催事を通じお客様とのお話しをさせて頂くなかでお茶と急須がとても危機的な状況であることを感じています。深蒸し茶と呼称される茶(「深蒸し」はお茶の製茶方法として物理的に有り得ません。蒸気ではなく、お湯で煮ているものです。世に出始めた当初は黄緑もしくは若干赤味を帯びた黄緑色のお茶にはいり、苦渋味が少なく甘みのあるお茶でした。現在の青々として苦味を感じるようなものとは別物です。製茶に使用される機械も35キロ機と呼ばれる小型機械が主流だった時代です。)が登場し、工場の大型化の流れと大量で効率化された生産、ビジュアル的にわかりやすい色で市場を席巻していきました。

そして現在、催事でお話しを聞く言葉の多くは「買うお茶や貰い物のお茶はみんな急須につまってしまっていれにくくてしょうがない。」「飲むと苦くて、胃が痛くなってね。」「色ばかりで味がしない。」「イグサを飲んでいるみたい。」「お茶っていつから粉みたいになってしまったの?」といったネガティブなものです。

業界で「急須で飲む」などといったキャッチフレーズを掲げますが、実際にいれてみればいれにくくて、わざわざ急須を使ってもその甲斐がないことばかり。
数十年にわたり大量生産、効率化、わかりやすさと利益追求を追った結果、大切なものが今、まさに失われようとしています。それにブレーキをかけ次世代に「茶」を繋ぐには生産に携わる我々と消費する人々が茶の本質に眼を向けることから始まります。

私が茶業界にはいり14年が過ぎました。未来のために誤魔化しではないお茶の話しをする時が来たように感じています。

日本茶専門店 錦園 石部商店
錦園店主 石部健太朗
日本茶インストラクター(02-0362)


謹賀新年2011 職人急須「宝生庵鉄色 リニューアル」

年末の初春之茶催事をご好評のうちに終わらせて頂きました。ありがとうございます。初春之茶はお茶本来の姿を鑑みてつくられた正統派の日本茶。そのお茶が多くの方々にご支持をいただけたことが大変嬉しいです。

さて、新しい年の始まりですね。錦園の今年初めのブログは「職人急須宝生庵 鉄色」がリニューアルのお知らせです。
誕生して約8年、製作者の磯部さんとロットごとに打ち合わせ修正をしながら「お茶をいれる為の調理器具」としての急須を目指してご案内をしてまいりました。これまでのクオリティでも全く問題はなかったのですが、ここで更にリニューアルをしました。

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新型の職人急須宝生庵「鉄色」です。
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茶漉しはこれまでと同じ極めて細かな陶製。大きな変化に気がつかないのは当然です。形はほぼ完成形なので、フォルムを崩さずに依頼したのは蓋の形状です。

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これまでの形から蓋にハカマのある「印篭」タイプに変更。製作ではひと手間以上掛かるのですが当面はこれまでと同価格(¥7980:税込送料別途)にて販売します。蓋のはめ易さと安定感はリニューアルの価値を十二分に感じます。


ファーストロットのデビューは1月3日からの6日までの三越恵比寿店1Fクロスイーギャラリーのイベントにて。宝生庵類以外にも数十種類のハンドメイドの逸品をご用意します。お近くにおいでの際はぜひお立ち寄りください。

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恵比寿三越さんのチラシにてご紹介を頂いております。


2011年、今年は生産効率の名の下にその本質を失った日本茶に対して一石を投じていく所存です。この先の日本茶の未来の為に。
ご期待ください。

日本茶専門店 錦園 石部商店
錦園店主 石部健太朗
日本茶インストラクター(02-0362)




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