茶園写真家としての仕事。日本茶ソムリエ和多田喜の今日からお茶をおいしく楽しむ本。
2009年7月31日。「日本茶ソムリエ和多田喜の今日からお茶をおいしく楽しむ本」と題された本が発売されました。これまでのお茶のいれ方にとらわれない面白い本になっています。
商品としての「一杯のお茶」に価格分の価値を持たせるというのけっして楽な事ではなく、それが高価なものであればなおさらです。日本茶カフェを経営し、その事に正面から向きあったからこそのいれ方があり、なによりも文章から著者がお茶そのものがとても好きだという気持ちが伝わってきます。
また、コラムに書かれている事柄はお茶というものがもつ可能性を感じます。私を含め、茶業者が日常の中で忘れてしまっていることなのかもしれません。
さて今回、書籍中の園地画像などを石部が担当させて頂きました。巻末に茶園写真家として登場しております。
製品としての茶が生まれる世界を少しでも伝えられればと数年来、茶に関連した写真を撮り続けてきましたが、その積み重ねが今回の書籍でお役に立てて嬉しく思います。
茶園には人と自然が作り出す造形美があります。園地は単一の植物(茶に関していえば遺伝子的にも同じ)で形成されている環境であり、とても不自然な場所ともいえます。でありながらも、よい茶園は自然の豊かさ、茶樹の活き活きとした力強さを感じ取れます。園地をつくった人も自然の一部であり、自然の中で折り合いをつけながら共存していく中で生まれる共鳴を身体で聴いているからなのかもしれません。
茶園やそれをとりまく自然、そこに関わる人たちはとても素晴らしい被写体です。自然仕立ての美しい茶樹群だけでなく、弧状のアーチが連なる畝の園地風景。茶の生産国だからこそ目に出来る光景です。そして園地だけに止まらず、畑では一枚の木の葉であった「茶の葉」が人の手を介して美しい工芸作物となってゆく様子などその魅力にあふれています。
最後に編集担当の方からの言葉です。
「日本と名のつく文化はこれからどうなってしまうのか?」みたいな感じで走り始めた企画です。日本茶、日本酒、日本建築・・・。とかく日本人は日本文化をないがしろにしがちです。お金ももちろん重要ですが、もっと大事で、無くしてはいけないものがあるだろう!と考えたときに思い当たったのが和多田さんでした。まずは、理屈ぬきに日本茶ってこんなに美味しいんだということを知ってもらいたく始めたのですが、本当にやってよかったと思っております。
私もお手伝いが出来て本当によかったと思っています。関係者の皆さんが伝えようとする大切な何かはちゃんと行間にあります。このような機会を与えて頂き嬉しいです。ありがとうございました。
書籍情報
タイトル「日本茶ソムリエ和多田喜の今日からお茶をおいしく楽しむ本」
出版:二見書房
http://www.futami.co.jp/book.php?isbn=9784576091037
茶園写真家 石部健太朗
日本茶インストラクター(02-0362)