2009年5月20日。立春から数えて百六夜目。築地東頭、製造最終日
最高峰の静岡茶。築地東頭の製茶が最終日をむかえました。私としては3月26日の丸子佐渡山 杉山八重穂から始まった新茶シーズンの終わりを感じる日でもあります。実際にはまだ築地東頭を含め仕上げ待ちのお茶があるので一段落といったわけではないのですが、夜中に製茶工場へ足を運ぶのはこれが最後。
朝7時に山の園地で手摘みが始まり、午後3時頃から製茶が行われます。最後のお茶が乾燥機を出るのはだいたい午前1時をまわる頃です。
新茶シーズン中、深夜近くなると横沢共同に縁のある生産家が訪れます。彼らのお茶について築地さんが評価をしたり、製茶のアドバイスがあったり、「茶一色」の時間が流れていました。
組合長の築地さん、工場長の豊さんと。
よいものが作り出されていく場所というのは実にいいものです。製造に関わる人達から良い雰囲気が生まれそれがさらにものを良くしていくのがわかります。茶とはいいものです。本当に。
さて、最近、消費者のリーフ離れといったニュースをよく耳にします。高級茶が売れないといった言葉を新聞の紙面でも見かけます。でも、それはこれまでの結果が出ているにすぎません。わかり易さやつくり易さ、売りやすさを追い、個性の無い同じようなお茶を大量につくり続けてきました。
「お茶が売れなくなったのは茶が嗜好品になってしまったからだ。」と報道関係者に伝えた茶業者がいるそうです。とても違和感を覚える発言であるとともに嘆かわしく思います。
茶は嗜好品となれるだけの力を持ち、また嗜好品としてこれまでつくりづづけられて来た工芸作物です。この事の価値を真っ向から否定して、大量生産かつ無個性のものにしようとする考え方は「茶」のもつ楽しさや可能性、そして茶にかかわる世界を潰えさせるもののほかありません。
錦園は良い品を安心してつくることが出来、その良さを飲む人もちゃんと理解をしている世界をつくりたいと思っています。
その方法はシンプルで生産の現場の自然、園地、人の様子をそのお茶を楽しむ人たちに伝えていくことと、出来たお茶をその個性を活かす「一杯の茶」とするための仕事をしていく事。
これは別に気負ったものではなく、茶専門店が専門店として当たり前のことをただ、当たり前にしてくことだと考えています。
今年もよいお茶が出来ました。お茶や茶器についての事柄など、お気軽にお声をお掛けください。微力ではありますが専門店としてのお手伝いをさせて頂きます。何卒、よしなに。
日本茶専門店 錦園石部商店
錦園店主 石部健太朗
日本茶インストラクター(02-0362)