とあるアンケートにおいて知名度のある静岡茶として上位に位置するのが「掛川茶」です。
新幹線から眺める茶園風景、駅近くの「掛川茶」の看板も効果的だなぁと思います。
車窓から見える茶園は悠々と広がるなだらかな茶園が多いのですが、掛川駅の北側には
かなり険しい山間地があり、そこの急傾斜地には「山のお茶」が息づいています。
ここは掛川の山間地。標高約300m「倉真(くらみ)」の画像です。

掛川茶のほとんどは深蒸し製ですが、こちらでこちらの園主高橋さんが作られるのは形状
のある「普通蒸し煎茶」。7年ほど前までは深蒸しを作っていらっしゃいましたが方針転換を
して普通蒸しを作り始めたとのこと。昨年にはよりよい普通蒸し煎茶を作るために工場の機
械を増設。(良質な普通蒸し煎茶を作るには理想的な60k1ライン。)

機械の多くは高林。(うわ、この揉捻機、木の揉板だ。と喜ぶ石部でした。)このようにテーパー
になっていない胴の方がお茶を切らないという生産家もいらっしゃいます。


機械ばかりではなく農作物である茶で最も大切な園地も見てのとおり、大きな親葉を育てる
芽重型の仕立て。普通蒸しのお茶を作る気持ちがあふれる茶園です。また更新三年目なの
に畝は高くなりすぎず、畝の上から見える軸(茎の切断面)も理想的な太さ。これは茶樹を
育てる技術の高さの証拠です。
園地を見回して防霜ファンが見られず、「ここの防霜対策は?」とうかがったところ、「ここは
スプリンクラーだから。」とのこと。「え、散水結氷法?」これにはびっくりしました。理想的な
防霜法とされる散水結氷法ですがネックになるのは大量な水の確保。お話しを伺っていくと
沢で水を準備しているのだそうです。言われてみれば畝は乗用やレール摘採にも採用され
ている新しいスタイルの3000R。

使用される肥料は有機が主で、園地のミミズを食べようとするのかイノシシが来て困っている
とのこと。(これは土作りに熱心な山間地の生産家が抱える共通の悩みだと思われます。)
対策としてされているのがこの電柵。電気を流して害獣よけにします。

園地の脇に立つ高橋さん。更新3年目の園として
理想的な畝の高さと親葉の大きさです。
品種はやぶきたが主で、極僅かにさやまかおりがあるとのこと。
生産家がどんなに立派な事を言っても園地を見れば、お茶への取り組みは一目りょう然。
高橋さんは決して多くを語らない方なのですが、園地を拝見していかに丹精なさっている
のかがはっきりと伝わってきました。とてもよいものを見せて頂きありがとうございました。
微力ながらも、このようなお茶があることを少しでも多くの方へご紹介するお手伝いが出来
れば嬉しく思います。掛川の普通蒸し煎茶、今シーズンより錦園にて取り扱いを開始する
予定です。ご期待ください。