日本茶インストラクター Nishikien owner's weblog 


日本茶インストラクターの店主によるお茶や茶器などにまつわる事柄。

常滑焼急須に託された次の階段

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常滑焼急須は生活雑器として作られた近現代の急須。決して長くはない歴史の中で、常滑だからこその先に生まれた稀有な焼物です。
 
使われる為の道具として作られたのに、使う事が勿体ないとさえ思う気持ちが嬉しさと混じり合いながら湧きあがってきます。
 
本末転倒なのですが図らずもその気持ちが湧きあがること。それはきっと、常滑焼急須に託された次の階段なのでしょう。
 
以前に茶葉を見ても感じた事があります。その美しさや風情から、湯を注す事を躊躇う気持ちになりました。飲む為に作られた物だというのに。
日本茶と常滑焼の急須。対なのだなと素直に思います。

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急須に蓋は必要なのか?

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急須に蓋は必要なのか?
答えは当然「必要」です。特に「良質な茶を生産及び販売をしている。」と口にするなら、無くてもいいなどといった答えになる筈はありません。

日本茶は園地での栽培、製造、成分、水質などが相まって「低温度帯の水(湯)」を用いても比較的短時間で浸出が可能な茶種です。

「お湯を冷まさなくてはいけない」と言われますが、低い温度帯でもお茶がいれられるのは大きなメリットなのです。

旨味成分が多く、軟らかな原葉を使用した日本茶の製造工程において、恒率乾燥(表面に出て来る水分と乾く水分を等しい状態)を維持しながら製茶を行えば表面から内側に向かって大きく味が変わるお茶が作られます。

※恒率乾燥の状態を維持するのは日本茶に限った事ではありません。これは茶生産の基本であり、烏龍茶製法の萎凋時における攪拌の大きな意味は恒率乾燥の状態を促す為です。

階層構造のようになっている茶の香味を引き出すには段階的に茶葉に与えるストレスを強くしていきます。

急須を使う場合の「ストレス」はお湯の熱です。闇雲に揺するといったストレスはバランスを壊し、煎を重ねる事によって楽しめる味わいを台無しにします。

茶葉に与える熱は「湯温」「湯量」「冷め方」によって決まるのですから、煎を重ねた先に更に熱を与えるには「冷めにくい」状態にしなくてはいけません。煎で言えばおおよそ四煎目以降。

一杯の茶を美味しくしたいとした時に温度のコントロールをするのに「蓋」は必要なのです。

「お茶は解く(ほどく)ようにいれる。」
「お茶は静かにいれる。」

これはお茶のいれ方の基本です。

時計の針を戻すようにお茶をいれましょう。お茶は最後に起きた事が最初に出て来ます。煎を重ねた先に蒸かした直後の香味や茶園で感じたような味わいが楽しめた時、それこそが「栽培、製茶、製造、お茶をいれる事の全てが上手くいった証」なのです。関わった人々の仕事の結実が「お茶」です。

お茶とは面白いものですね。

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陶製茶漉しの変更についてのお知らせ

陶製茶漉しの変更についてのお知らせ

陶製茶漉しの変更


急須生産をお願いしております窯元より、茶漉しの形状変更のアナウンスがございました。生産上の都合により、暫くの間、極細(ごくささめ)タイプの茶漉しからスタンダードタイプとなりますとのことでした。

鋳込み急須やポット及び職人急須宝生庵などで既に在庫として持っている製品が無くなり、次回生産時より茶漉しがスタンダードタイプへと変わります。極細タイプ茶漉しの再生産時期は未定となっています。

※錦園の急須黒0.5号は現在、在庫がありません。
次回、入荷の製品はスタンダードタイプの茶漉しとなります。

不変の言葉。モノづくりの現場にて。

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常滑にて穴窯からの窯出しに立ち会わせていただきました。穴窯は薪を焚いて焼成を行います。
焼成時の燃えた薪が灰となり火焔と共に胎に接して釉になるのが「自然釉」です。自然釉でなければ生まれない景色は焼物の面白さの原点でもあります。

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棚板にくっついてしまわないように置いた土の玉が崩れて隣の品に接したり、転がってしまってドミノ倒しのように壊れてしまったりする事もあります。

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そして、何より厄介なのは蓋を乗せて焼成をする急須は蓋が取れなくなるといった他の品には無い大きなリスクを背負っています。 釉となった灰が蓋と胴の間を埋めてしまい、蓋が外れなくなってしまう事もしばしばです。今回も約半分が世に出る事が出来ませんでした。

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どれが無事に窯を出るのかわからないから、ひとつも手を抜いて作る訳にはいかないんだよ。と、窯元の言葉。
胴、持ち手、注ぎ口、蓋、茶こしの5つの部品から成る急須。湯呑や徳利を考えれば5つの製品の集合体です。手づくりの細かな茶こしを作る手間は他の4つの部品をつくり組み合わせるのと釣り合うともされます。

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壊さざるを得なかった急須を見て、実に切ない気持ちになります。

「コレは蓋が取れそう。」
「もうちょっとか。」
「やった、取れた。」
「ヒビが入ったりしていないか水を入れて確認しよう。」
「大丈夫だね。」
「良かったなあ。」

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何故このような手間とリスクを負ってまで穴窯で急須を焼くのか。
常滑だから、ならではの比類ない品をつくり、お客さまに喜んで欲しい。その気持ちが作家の力の源です。

「何遍やっても難しい。本当に勉強だなあ。次はこうすればもっと良くなる。」

モノづくりで忘れてはいけない不変の言葉が今日も耳に届きました。
仕事として関われる事に感謝です。

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精緻と偶然が織りなす自然釉の常滑急須。
秋の日本橋三越本店催事にてご覧いただけるかと思います。ご期待ください。

「至福のお茶時間」
常滑焼逸品急須と限定生産静岡茶特別試飲販売会
<場所>
日本橋三越本店5階和食器
<会期>
2015年9月9日(水)~9月22日(火)

常滑焼急須について

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物を好き嫌いで買う事は悪い事ではありません。それは買う者の特権です。でも、なんとなくの好き嫌いではなく、好きと感じた理由や嫌いと感じたワケなどを勉強し考えると買う事は更に楽しくなり、お金を使う事が意味を持つのです。それは強制されるものでもなく、自らが選んで行う事であり、年齢を重ねた者の嗜みでしょう。

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では常滑急須の面白さの下地は何か?

・吸水性のほとんど無い焼物である事
・お茶をいれる際にコントロールの幅が広い事
・軽くて使いやすい事
・かつての巨大湖東海湖の存在から産せられた陶土があった事
・六古窯のひとつとして窯業の基礎があった事
・都市化の流れにのり一気に産業としての窯業が拡大した事、エトセトラ・・・・

間違いではありませんが、違います。常滑急須ならではの面白さは半島の狭い立地条件と後発産地で歴史が浅い事。分業化が出来ないまま大量生産期を迎えて「製作者の見える製品づくり」が行われた事から生まれました。手づくりでは不可能な生産量と価格を鋳込み製の急須が担えた事も理由のひとつです。

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産業としての規模が大きくなれば効率や換金性を高める為に「分業化」が行われます。焼物では生地屋さんと絵付け、窯屋など。誰々作と言いながらも最初から最後までを一人の仕事として品物を作り上げるような事は大規模な産地ではありません。

知多半島を海に向かいその終わりにある町が常滑です。誰が作ったのか、どんな仕事をしたのかが急須を通じて分かる事。これこそが常滑急須の個性の芯になっています。

道具として使う急須には皿などの食器には無い制約があります。手の角度、精度、持ちやすさ、形など自由度は非常に狭いのです。その中で「職人」がそれぞれの「ならでは」を目指して物づくりをする場所。それが常滑であって、常滑の急須屋さん(※急須専門につくる職人を「急須屋さん」と呼びます。)です。

「常滑のような所はない。特別な産地だ。」常滑急須を扱う問屋社長と時折、話しをし交わす言葉です。これは常滑を正に体現する一言なのです。

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後発産地で歴史が浅い事。産業の規模は異なりますが明治以降に輸出を主に生産量を伸ばし茶産地であり集散地となった静岡。重ねて見える部分も多く、抱えている問題も似ています。

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